文化庁文化部宗務課で令和5年版に公表した「宗教年鑑」の統計によると、日本の神社数は80,709社、寺院数は76,634寺存在します。多くの人は、古都のイメージから京都や奈良に神社や寺院が多いと思いがちですし、あるいは人口の多さから東京や大阪に多いと考えるかもしれません。しかし、実際には愛知県がその数で全国1位です。なぜ愛知県が一番多いのでしょうか?文化庁の総数データや色々な考察をご紹介します。
神社・仏閣数ランキングから見る愛知県
日本の神社数は、80,709社です。都道府県別神社数トップ5は以下の表になります。愛知県は4位の3,352です。参考までに京都府では1,761、奈良県では1,386になります。
ランキング | 都道府県名 | 神社数 |
---|---|---|
1位 | 新潟県 | 4,672 |
2位 | 兵庫県 | 3,857 |
3位 | 福岡県 | 3,411 |
4位 | 愛知県 | 3,352 |
5位 | 岐阜県 | 3,265 |
日本の寺院数は、76,634寺です。都道府県別寺院数トップ5は以下の表になります。愛知県は1位の4,532です。参考までに東京都では2,879・奈良県では1,803になります。
ランキング | 都道府県名 | 寺院数 |
---|---|---|
1位 | 愛知県 | 4,532 |
2位 | 大阪府 | 3,370 |
3位 | 兵庫県 | 3,286 |
4位 | 滋賀県 | 3,204 |
5位 | 京都府 | 3,051 |
神社仏閣の総数で見ると、愛知県が7,884で日本トップです。次いで、新潟県が7,427、兵庫県が7,143となっており、7,000以上の神社仏閣が存在するのは3県だけです。このデータを見ると、意外に感じる方も多いかもしれません。
ランキング | 都道府県名 | 総数 |
---|---|---|
1位 | 愛知県 | 7,884 |
2位 | 新潟県 | 7,427 |
3位 | 兵庫県 | 7,143 |
4位 | 千葉県 | 6,172 |
5位 | 福岡県 | 5,776 |
参考までに岐阜県は5,507の6位、静岡県は5,452の7位です。イメージの強い京都府は4,812、奈良県は3,189になります。
神社・仏閣数の推移
文化庁は、昭和24年(1949年)から宗教の動向を把握するために、総計調査を開始しました。下記は抜粋してまとめた表になり、神社仏閣数の推移はご覧のとおりです。
(文化庁宗教年鑑はこちらから確認できます。)
年数 | 神社総数 | 寺院総数 |
---|---|---|
令和5年 | 80,709 | 76,634 |
令和4年 | 80,847 | 76,699 |
令和3年 | 80,884 | 76,815 |
令和2年 | 80,934 | 76,907 |
令和元年 | 81,074 | 76,930 |
平成30年 | 81,154 | 77,003 |
平成20年 | 81,320 | 77,467 |
平成10年 | 81,449 | 77,190 |
平成元年 | 81,530 | 77,209 |
昭和50年 | 81,257 | 76,914 |
昭和40年 | 80,634 | 75,245 |
昭和30年 | 80,970 | 75,205 |
近年、神社や寺院の数は減少傾向にあります。人口減少やライフスタイルの変化により、多くの神社や寺院が経済的に困難な状況に直面していると言われています。
織田信長ゆかりの地である愛知県江南市にある久昌寺もその一つです。織田信長の側室「吉乃」の生駒家菩提寺である久昌寺は2022年に廃寺が決定され、今後は久昌寺公園として整備される予定になりました。
なぜ愛知県が全国1位なのか?
愛知県が神社仏閣の総数で日本一多い理由について、関連資料にはいくつかの考察が記されていますが、明確な理由は分かっていません。そこで、いくつかの考察を紹介します。
交通の便が良い地域
愛知県(尾張・三河地区)は、西日本と東日本を結ぶ人流や物流の要所として栄え、文化交流も盛んでした。その結果、産業が生まれ地域の人口は増加し、交通の安全祈願や宿場町の商売繁盛を願う機会も多くなりました。
*1873年(明治時代)には人口第1位になった時期もあったそうです。
尾張徳川家による保護
尾張徳川家は寺院保護に力を注ぎ、浄土宗を積極的に保護しました。これは、尾張徳川家の菩提寺である名古屋市の建中寺が浄土宗の寺院であったことや、徳川家康自身が熱心な浄土宗の信者であったことが大きく影響していると言われています。
権力争いに参加せず
政治の中心地であった奈良・京都・江戸などの都市では、長い間、権力が神社や寺院を統制していました。このため、これらの都市には大きな神社仏閣が数多く残り、一方で小さな神社仏閣は統合されていきました。しかし、愛知県ではこのような統合が比較的少なかったとされています。
訪れたい愛知県のおすすめ神社仏閣
愛知県には、弥生・古墳時代から天皇家と関わりのある神社や、日本武尊、安倍晴明、源頼朝など歴史的な人物に関連する寺院が数多く存在します。その中から、今回は以下の神社や寺院をご紹介します。
熱田神宮
日本三大神宮の一つと言われる熱田神宮は、三種の神器の一つである草薙神剣をご神体とする熱田大神をお祀りしています。おすすめランキングや人気ランキングでも常に上位にランクインする名所です。今年秋には横丁がオープンしますので、さらに楽しいエリアになります。
名称 | 熱田神宮 |
所在地 | 愛知県名古屋市熱田区神宮1丁目1-1 |
公式サイト | https://atsutajingu.or.jp/jingu/ |
豊川稲荷
日本三大稲荷の一つとされる豊川稲荷は、正式名称を「圓福山妙厳寺」といいます。多くの人は、豊川稲荷に「お稲荷さん」が祀られていると思われがちですが、御本尊千手観世音菩、鎮守として豐川吒枳尼眞天(とよかわだきにしんてん)が祀られています。
名称 | 豊川稲荷(妙厳寺) |
所在地 | 愛知県豊川市豊川町1番地 |
公式サイト | https://www.toyokawainari.jp/ |
三英傑ゆかりの神社仏閣
愛知県の尾張・三河地区は、三英傑(織田信長・豊臣秀吉・徳川家康)ゆかりの地であるため、一度は訪れてほしい場所がいくつかあります。
万松寺
織田家の菩提寺として建立された、480年以上の歴史を誇るお寺です。名古屋城の築城に際し、徳川家康の命によって現在の地に移されました。歴史ファンには特に有名で、織田信長が父・信秀の葬儀で位牌に抹香を投げつけたという逸話でも知られています。
名称 | 亀岳林 万松寺 |
所在地 | 愛知県名古屋市中区大須3-29-12 |
公式サイト | https://www.banshoji.or.jp/ |
豊国神社
豊國神社は、豊臣秀吉を祀る神社です。地元の有志によって1885年に創建されました。中村公園内に鎮座し、公園内には初代中村勘三郎生誕の記念像や大正天皇御手植えの松など見どころも多く、区民の憩いの場として愛されている地です。
名称 | 豊國神社 |
所在地 | 愛知県名古屋市中村区中村町茶ノ木 |
公式サイト | http://toyokuni-jinja.jp/ |
瀧山東照宮
日本三大東照宮の一つ瀧山東照宮は、3代将軍徳川家光によって瀧山寺境内に勧請されました。岡崎市には、大樹寺や伊賀八幡宮、岡崎城など徳川家にかかわる神社仏閣も多く歴史的価値も高いので、是非訪れてみてください。
名称 | 瀧山東照宮 |
所在地 | 愛知県岡崎市滝町字山籠107 |
公式サイト | ー |
奇祭の神事を執り行う神社
西尾市の鳥羽の火祭り、刈谷市の万燈祭など、天下の奇祭と言われる祭が開催される神社をいくつかご紹介いたします。
尾張大國霊神社
毎年2月に開催される国府宮はだか祭は1200年以上の歴史があり、今年初女性が参加されたこともあり話題になりました。午後3時から始まる「儺追神事(なおいしんじ)」では、神男がはだかの男たちと激しく揉み合う場面が見どころです。
名称 | 国府宮 はだか祭 |
所在地 | 愛知県稲沢市国府宮1丁目1-1 |
公式サイト | https://www.konomiya.or.jp/hadakamatsuri |
田縣神社
毎年3月に開催される田縣神社の豊年祭は、直径60cm長さ2m余りの大男茎形(男性の性器)をヒノキで作り神輿で担ぎ、五穀豊穣・子孫繁栄などを祈願します。近年海外の方もよく見かけるようになりました。
名称 | 豊年祭 |
所在地 | 愛知県小牧市田県町152 |
公式サイト | http://www.tagatajinja.com/pg28.html |