名古屋市緑区には、戦国時代の名将・織田信長が大きな勝利を収めたことで知られる「桶狭間の戦い」にまつわる歴史的スポットが数多く残されています。特にこの地では、本戦に先立って行われた前哨戦の舞台である「大高城跡」「丸根砦跡」「鷲津砦跡」が、今も静かにその歴史を物語っています。
一般的に桶狭間の戦いといえば、今川義元を討ち取った本戦に注目が集まりますが、実はこの緑区における前哨戦が、戦いの行方を左右する重要な役割を果たしていたのです。
今回は、そんな歴史の舞台を歩いて巡る「歴史観光モデルコース」として、名古屋市緑区に点在する穴場スポットをご紹介します。歴史好きの方はもちろん、名古屋近郊で気軽に楽しめる観光ルートを探している方にもぴったりの内容です。名古屋からアクセスしやすい緑区の歴史散策へ、ぜひ出かけてみませんか?
桶狭間の戦いとその前哨戦について

桶狭間の戦いは、1560年(永禄3年)に織田信長が今川義元の大軍を打ち破った、日本三大奇襲の一つに数えられる合戦のひとつです。数万ともいわれる今川軍に対し、わずか数千の兵で挑んだ信長の奇襲戦法が功を奏し、歴史に残る大逆転劇となりました。
しかし、この劇的な勝利の陰には、前哨戦での重要な動きがありました。その舞台となったのが、現在の名古屋市緑区に位置する大高城、丸根砦、鷲津砦です。
当時、大高城は今川方の拠点であり、織田軍にとっては敵の喉元に突きつける刃のような存在でした。信長はこの大高城を包囲するため、近隣に丸根砦と鷲津砦を築き、守備を固めていました。桶狭間本戦の当日、今川義元はまずこれらの砦を攻撃し、丸根・鷲津の両砦は激戦の末に陥落。これにより、織田軍は大きな損失を被ることになります。
このような状況の中、信長は決死の覚悟で出陣。敵軍の油断を突いて本陣を急襲し、義元を討ち取るという奇跡の勝利を収めたのです。つまり、桶狭間の戦いの本質を理解するには、前哨戦の動きを知ることが欠かせません。
現在では、それぞれの史跡に石碑や案内板が設置されており、戦国時代の緊迫した空気を感じながら歴史散策が楽しめます。派手な観光地ではないものの、歴史好きにはたまらない穴場スポットとして注目されています。
大高城跡


大高城は、桶狭間の戦いにおける今川方の拠点として機能した重要な城郭です。現在の名古屋市緑区大高町に位置し、かつては尾張と三河の境界を見張る戦略的要地として築かれました。
桶狭間の戦い直前、今川義元はこの城に兵糧を補給するため、大軍の進軍とともに松平元康(のちの徳川家康)を派遣。元康は巧みに織田方の包囲を突破して物資を届け、大高城に立てこもる味方を助けました。この動きが信長の奇襲決断を促すきっかけの一つとなったともいわれています。
現在、大高城跡は「大高城跡公園」として整備されており、土塁や空堀の跡、案内板が静かにその歴史を物語っています。高台からは周囲の街並みを一望でき、戦国の風景に思いを馳せながら散策が可能です。
アクセス:JR東海道本線「大高駅」から徒歩約10分
観光ポイント:城跡の地形、石碑、説明看板
丸根砦


丸根砦は、織田信長が今川軍の進軍に備え、大高城を包囲する形で築いた防御拠点のひとつです。現在の緑区鳴海町にあり、標高のある場所に設けられていたことから、周囲の動きを見張る重要な役割を担っていました。
桶狭間本戦当日、今川軍はまず丸根砦を激しく攻撃し、守将・佐久間盛重らが奮戦の末に戦死。砦は陥落しましたが、その奮戦が敵軍を一時的に足止めし、織田軍の本陣攻撃を成功に導いたとも言われています。
現在は住宅街の中に小さな公園として整備され、丸根砦跡の石碑と説明板が設置されています。観光客が少なく、静かに歴史を味わえる穴場スポットです。
アクセス:名鉄名古屋本線「鳴海駅」から徒歩約15分
観光ポイント:砦跡の案内板、周辺の高台の眺望
鷲津砦跡


鷲津砦も、丸根砦と同じく織田軍が大高城包囲のために築いた砦です。位置は現在の緑区鷲津町。こちらも桶狭間当日、今川軍の激しい攻撃を受け、守将・飯尾定宗が討ち死。丸根・鷲津の両砦が落とされたことで、信長軍は一時的に劣勢に立たされました。
この砦も、現在では小さな公園として残され、石碑と説明板が設置されています。大高城や丸根砦と比べるとさらに目立たない場所にあるため、歴史好きにはたまらない穴場です。地域の住宅街の一角に佇み、戦国の面影を静かに感じ取ることができます。
アクセス:JR「大高駅」から徒歩約10分
観光ポイント:石碑、現地解説パネル
緑区歴史モデルコース:半日で巡るルート紹介

名古屋市緑区に点在する「大高城跡・丸根砦跡・鷲津砦跡」は、それぞれ徒歩やバス、自転車での移動が可能な範囲にあり、半日あれば十分に巡れる歴史観光モデルコースとなっています。
歴史ファンはもちろん、名古屋から日帰りで戦国の名所を体験したい方にもぴったりのルートです。
JR「大高駅」
名古屋駅から東海道本線で約20分。アクセス抜群で、周辺は静かな住宅地に広がる歴史エリアです。
まずは今川方の拠点である大高城跡からスタート。
高台に整備された公園で、当時の地形を活かした防御構造を体感できます。
大高城を出て、信長が築いた防御拠点・丸根砦へ。
住宅街の中にひっそりと佇む石碑が、かつての激戦地を物語ります。
丸根砦から歩いて行ける距離にあるもう一つの砦跡。
さらに人通りが少ないため、穴場的な歴史スポットとしてじっくり楽しめます。
知多四国霊場:87番、知多西国三十三所霊場:26番の臨済宗永源寺派の寺院、1560年鷲津砦の兵火により焼失しましたが、江戸時代に再興した。鷲津砦に隣接してますので併せて散策。
まとめ
名古屋市緑区に点在する大高城跡・丸根砦跡・鷲津砦跡は、派手な観光施設があるわけではありませんが、戦国時代の重要な戦い「桶狭間の戦い」の舞台として、知る人ぞ知る歴史的名所です。
これらのスポットは、住宅街や高台に位置しているため、アクセスには公共交通機関や徒歩が便利です。実際に訪れて感じたのは、周辺に専用駐車場がなく、車でのアクセスはあまりおすすめできないということ(ただし大高駅周辺にはコインパーキングあり)。運動靴など歩きやすい服装で訪れるのがベストです。
また、現地の史跡自体は石碑や案内板が中心で、いわゆる「映える」観光地ではありません。だからこそ、歴史の背景を知ったうえで訪れると、静かな場所に刻まれた戦国ロマンがより深く心に響きます。
織田信長や戦国時代の歴史に興味がある方は、名古屋市中心部からも近いこの緑区の穴場歴史スポットを、ぜひ一度歩いて巡ってみてください。歴史を肌で感じながら、自分だけの視点で戦国の舞台を体感できる、そんな貴重な体験が待っています。